クールな部長の独占欲を煽ったら、新妻に指名されました
もっとはっきりと断るべき?
でも、仕事相手である彼を強く拒絶するのは失礼かもしれない。
だけど、このまま流されて好きでもない男の人とふたりでホテルの部屋に入るのは非常識な行動だと思う。
いや、もしかしてそんなことを考えるのは自意識過剰?
迷いながら桑井さんの顔を見上げると、彼はうっすらと笑みを浮かべていた。
私の戸惑いを見透かすようなその表情に、ぞくっと背筋が冷たくなった。
「あの、やっぱり私は……」
「いいから早くしろって」
私の言葉をさえぎって強引に手首をつかむと、目の前にあるビジネスホテルに向かって歩き出す。
「は、離してください……!」
人の意見も聞かず強引に連れ込もうとする彼に、思わず声が高くなった。
ホテルの前で言い争う私たちを不思議に思ったのか、通り過ぎる人たちがちらちらとこちらを見る。