クールな部長の独占欲を煽ったら、新妻に指名されました


 以前ポメラニアンを抱っこした記憶を思い出す。

 もふもふの丸い体に小さな手足、いつも笑っているように見えるかわいらしい顔。
 ペットショップでひと目ぼれして、店員さんに抱かせてもらった。


 けれど、俺がおそるおそる腕の中に抱きしめると、人懐っこかったポメラニアンが急におびえて俺から逃げようと暴れ出した。

『きっとお客様は背が高いので、抱っこが怖かったのかもしれませんね』と店員さんが申し訳なさそうに言ったのを覚えている。

 子供や動物に怖がられるたちなのは自覚していたけれど、そこまで拒絶されるとさすがにショックだった。


 そんな苦い記憶を思い出しながら遙を見下ろしていると、後ろからぺしんと頭をたたかれた。

『恵介お前、遙を凝視しすぎ』

 真一が妹の遙を俺の視線から隠すように間に立つ。

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