クールな部長の独占欲を煽ったら、新妻に指名されました

 就職活動がはじまると自然に真一の家から足は遠のき、大学を卒業し働きだしたころにはすっかり彼女を忘れていた。
 けれど何の因果か十年近くたって遙と再会することになった。

 勤めていた監査法人から、真一の会社にヘッドハンティングされ財務管理部の部長として働きはじめた。

 そのころ真一から頼まれたのだ。

『妹がうちに入社するけど、ほかの社員には社長の娘なのはふせるつもりだから、お前がフォローして面倒を見てやってくれ』と。


 記憶の中のポメラニアンのような愛らしい姿を思い出して思わず頬を緩める。
 あの子がもう大学を卒業し社会人になるということに驚きながら了解すると、真一は厳しい顔で俺の耳もとに口をよせた。

『わかってると思うけど、遙に手を出すなよ』

 遙に初めて会ったときも過保護な真一に同じようにくぎをさされたのを思い出し、『七歳も年下の女の子を相手に手を出すわけないだろう』とあきれながら聞き流した。



< 66 / 218 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop