クールな部長の独占欲を煽ったら、新妻に指名されました



 私が青ざめていると、後ろから靴音が聞こえてきた。
 振り返ると、先輩の新谷さんだった。

「あ、新谷さん。おはようございます。今日は早いんですね」

 いつも彼は始業時間ギリギリに出社するのに。そう思いながら挨拶をすると、新谷さんはものすごい勢いで頭を下げた。

「宮下さん、本当に申し訳ないっ!」

「あの……?」

「先週の飲み会に無理やり宮下さんを連れて行って、しかも酔ってはぐれちゃってごめん!」

 前屈をしているのかと思うほど深く腰を折って謝罪をされる。


 そうだ、南部長との結婚で頭がいっぱいだったけれど、新谷さんについていった飲み会で桑井さんにホテルに連れ込まれそうになったんだ。

「いえ、南部長が来てくれてなにごともなかったので……」

 私が首を横に振ると、新谷さんは「宮下さんが怒ってなくてよかったー」と大きく息を吐きだした。


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