クールな部長の独占欲を煽ったら、新妻に指名されました


「きのう部長から電話があって、宮下さんを勝手に飲み会に連れて行ったのをめちゃくちゃ怒られたよ。宮下さんになにかあったらどうするつもりだったんだって。同じ職場の仲間を取引相手の機嫌を取る道具とでも思ってるのかって」


 心から反省した様子の新谷さん。

 私より三歳年上の二十七歳の彼は茶色に染めた髪と人懐っこい笑顔でとてもフレンドリーな先輩だけど、今日はいつもの明るさは影を潜めげっそりしているようだった。

 部長からよっぽど厳しく注意されたのかな。

 
「それから、宮下さんって社長の娘だったんだね」

 声を潜めてそう言われた。

「ど、どうしてそれを……」
 
 私が驚いてたずねると「さっき始業前に社長と専務に呼び出されたんだ」と青ざめた顔で言う。


 過保護な父と兄のことだから、新谷さんをきつい口調で叱責したんだろう。
 朝帰りをした私をものすごい剣幕で怒鳴る父の姿を思い出し、新谷さんと同じくげっそりした表情になる。

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