クールな部長の独占欲を煽ったら、新妻に指名されました
週末兄からもさんざん部長の学生時代のモテエピソードを聞かされた。
バレンタインやクリスマスなどのイベント前には彼に告白する女子たちが群れを成したとか、どんなかわいい子に迫られても少しも動じなかったとか。
「覚悟してるって。遙ちゃん、そんな物分かりがよくて大丈夫?」
「大丈夫って、なにがですか?」
眉をよせてうつむいた千波さんはしばらく黙り込んだ後、深刻な表情でこちらを見た。
「騙されてない?」
「へ?」
唐突な言葉に、思わず間抜けな声が出た。
騙すって、部長が私を?
「だって今まで付き合うどころか口説かれるもしなかったんでしょう? それがいきなり結婚なんて。もしかしてだけど、純粋な遙ちゃんを出世のために利用しようとしているんじゃない?」
「利用……」
小さな声で繰り返した。