クールな部長の独占欲を煽ったら、新妻に指名されました
新谷さんに言われた『逆玉を狙うくらい野心のある男なら別だけど』という言葉が耳の奥でよみがえる。
まさか、南部長は逆玉にのるために私を利用している……?
ずずーんと気持ちが落ち込んで暗い表情になると、向かいに座る千波さんが慌てたように私の肩をつかんだ。
「ごめん、無責任に変な話をして! 今のは私の勝手な想像だから!」
私の肩を揺らしながら謝る彼女に向って、「だ、大丈夫です」と首を振る。
「実際あんなに素敵な南部長がどうして私なんかと結婚しようと思ったのか、不思議だなと思っていたし……」
酔った勢いで手を出した責任と、会社での出世のために私を結婚相手に選んだとしたんなら納得できる。
「でも考えてみたら、もしこの結婚にほんの少しの打算的な理由があったとしても、遙ちゃんにとって南部長は最良の結婚相手かもしれないわよね」
「最良の結婚相手ですか?」
「だって、遙ちゃんが結婚するとなれば、あの社長と専務が納得するほどの男じゃないといけないのよ。その辺の男じゃ問題外じゃない。でも南部長は会社になくてはならない重要な人物だし、ふたりとも彼の人柄も有能さも認めているでしょ?」