クールな部長の独占欲を煽ったら、新妻に指名されました
確かに。
私と南部長の突然の結婚宣言に父と兄は戸惑い嘆いてはいたけれど、頭ごなしにだめだとは言わなかった。
それだけ部長をふたりが評価し信頼している証拠だろう。
たぶんこれが違う男の人だったら、話を聞きもせず家を追い出して完全シャットアウトしたに違いない。
「きっと南部長を逃したら、この先あのふたりのお眼鏡にかなう相手なんて現れないわよ」
千波さんに言われ私は青ざめる。
確かに、そんな有能な人と出会いさらに私を好きになってもらえる可能性はかぎりなくゼロに近い気がする。
「もし相手に打算があったって、遙ちゃんの可愛さで南部長をメロメロにすれば問題ないわ!」
表情を曇らせた私を慰めるように千波さんはそう言った。
「メロメロにって、いったいどうすれば」
「とりあえず、部長の部屋におしかけて色仕掛けをするのよ。恋愛はいかに相手に惚れさせて主導権をとるかが重要なんだから」
「部屋に押しかけて色仕掛け……」
恋愛経験ゼロの私が、あの経験豊富そうな部長相手に色仕掛けなんてできるだろうか。
「がんばれ遙ちゃん」
ぐっと親指を立て笑顔を浮かべる千波さんに、私はごくりとつばをのみこんだ。