全ては君の思うまま
「1日だけよ、後はなしだから」

それを聞いた鷹野は自分もワインを口に含んだ。

「じゃあ俺も、本気出しますから」

どうかしている。どうかしているぞ、私。
こんな、こんなことってあるか。人生32年、お持ち帰りされたことなんてなかったし、そういうガードは割と固めだったし、なんであんなこと言ってしまったんだ。大人といいながら、経験豊富じゃないし、そこのところ鷹野が勘違いしてないといいなと思う。

でも年下なんて1度も経験ないし、たぶん相手もこんなもんかってすんなり諦めると思うんだ。普通じゃん、歳上だって普通の女じゃん、変わらないじゃんってあきらめてくれて、私も1日だけ年下の男に相手にしてもらえるんだったら美味しい条件じゃないか。
だってたぶんもう人生に2度とないよ。
こんなに誘われることも、好きだって言われることもない。

この奇跡の瞬間を逃してどうする!

私は高いお酒を飲んだからか、思考回路がおかしくなっている。

「みんなと少し話したら、俺は仕事だって電話に出ます。そしたら、抜けましょう。2人で」

段取り。あなたの段取りの良さ。
こういうことは前にも何度かあったのだろう。そして私も簡単に罠にかかってしまったということ。
< 11 / 72 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop