全ては君の思うまま
私が言う前にもう情報を仕入れているのがこの男なわけ。

課長からの話が終わってデスクに戻ると、スマホにはメッセージが入っている。もう、誰かはわかっていて、この件も筒抜けのはず。

『ビストロ部門って、マンションの最寄駅の隣の駅でしょ?俺の部屋、すごく立地よくない?』

そーですね。立地的には最高だわ。

『じゃあ来週から俺のとこ住みなよ!』

住みなよ!って。

『家電とかは揃ってるし、服と日用品持ってくればいいでしょ?来週の土日、車出すよ?』

『仕事変わったりすると悩みも増えるから。俺、寧々のこと心配だから。一緒に住むなら俺も安心だし』

立て続けに送られてくる、このメッセージ。
彼の中では決定事項になっていく。確かに私のアパートからは少し遠いけど通えない距離ではないような。

『ちょっと考えさせて』

メッセージを送って、ふーっと息を吐き出す。

「なんか、巻き込んじゃってごめんね」

生島さんが声をかけてくれる。

「まあ、仕方ないですかねえ」

弱気の返答を予想していなかったらしく、生島さんはまた小声で

「何?彼氏とケンカ?」

「違いますよ」

ちょっと不機嫌に言い返す。
私の情報が鷹野に筒抜けなのは、あんたのせいだろ!と目で訴える。生島さんは善意でやっているのかもしれないけど、もう、考えること2倍になっちゃったし。
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