全ては君の思うまま
車を運転する鷹野の顔が、どことなく曇っている気がした。確か、新しい家族とはあまり合わなくて家を出たと言っていたような。

「あのさ、鷹野のお父さんって…」

「やさしいよ、あの人はいつも」

自分の父親のことをあの人と言った。それ以上聞けなくなる。

「ごめん。いや、あの人には寧々のこと紹介しなくちゃならなかったから、別にいいんだ。もし失礼があればそのときは俺が守るから」

うん、と頷く。

途中でスーパーに寄り、買い物を済ませた。
マンションに着いて、荷物を運び終える。

「寝室は一緒でいいと思うんだ、でこっちの部屋ずっと空き部屋だったから使って。昨日掃除しておいたけど、大丈夫かな?」

「うん、きれいだよ。ありがとう、掃除までしてもらってごめんね」

私の荷物を部屋におき、ひとまず食材を冷蔵庫にしまう。

そのとき、インターホンがなった。

「来たみたい。寧々は座ってていいから。コーヒーも俺がいれる」

マンションの玄関のオートロックを解除する。そして、コーヒーをマシンにセットした。

「親父一人で来たみたいだね、珍しい」

じっと座っているのも落ち着かない。
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