全ては君の思うまま
今日は日曜日、明日までお休みをもらった。
といっても、3時あがりでほとんど夜勤明けに近い。

シャワーを浴びおわると、キッチンから光がもれていた。
…槙、起きちゃったかな。
キッチンをのぞくと、槙が水を飲んでいるところだった。

「起こしちゃった?」

「いや、喉が乾いて。おかえり」

「ただいま」

おかえり、っていいなぁ。一緒に暮らし始めると、こんなちょっとのことに癒される。

「1週間、どうだった?」

さりげなく、腰に手を当てられてエスコートされる。行き先はリビングのソファ。間接照明が優しく灯っている。槙にもたれかかるように座らされてしまう。

「生島さんのプラン、なかなか実現は大変そうだなぁ」

いつもなら、大丈夫なんとかなる、なんて強気の癖に、今は弱くなってしまっている。それもこれも甘えさせてくれる、槙のせい。

「来週から新しいシェフを投入するらしいよ。メニューも女の子か喜びそうなものを増やすみたい」

生島さんと話したみたいで、槙は店長さえ知らない情報を教えてくれる。たった1週間なのに、営業部が恋しい。

あの私の席からはちょうど槙の背中が見えて、話せなくても姿が見えるだけで年甲斐もなくドキドキしてしまうのだ。今は働く場所も違うから、目で追うこともできない。

「生島さんは来週の昼営業開始を延ばして、研修を入れようとしてる」

「まあ、それは正解だよね」

「寧々の電話の声がどんどん元気なくなってくって、心配してたみたい。俺にちゃんとフォローしてね、って頼まれた」

そうだったのか。私、無理してるのバレバレだったか。

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