全ては君の思うまま
槙の運転する車は高速に乗った。
デートしたときに二度、彼の車に乗ったけど当たり前のように左ハンドルだった。

友達がそのディーラーに勤めているから特に気にせず買った、とSUVを運転している。

何から何までおしゃれかよ。
一人でつっこむ。
この人は本当にすごいなぁと運転している横顔をチラ見した。きれいな横顔をしてる。

「まだかかるから寝ててもいいよ」

そしてやさしい。
私は窓の外を見ながら、ぼんやり、彼のことを考える。

「あのさ、私のどこがそんなに好きなの?」

ずっと思っていたこと。
どうしてそんなに私が好きなのか。
彼は軽く笑って、

「本能的に好きだなって思った」

本能?!
何それ?野生の勘的なものですか?!

「すごく面白い顔してるけど、大丈夫?」

驚愕した顔を見て、槙は爆笑している。そんなに変な顔してたかな。

「そんなに笑わなくても…」

口をふくらますと

「かわいいなぁ。寧々の全部がすきだ」

さらっとそんなことをいって、無邪気な満面の笑みでこちらを見る。

あまりの不意打ちに、心臓がうるさい。
私のちっぽけな疑問など、この人には全然意味のないものなのかもしれない。

だって私だって同じことを聞かれたら困る。
気がついたら、もう好きになってたなんて言ったら槙はどんな顔をするだろう。



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