全ては君の思うまま
ホテルから少し離れたところに、小さな建物とテントが張ってある。

そのテントは私の知らない大きさだ。そのテントの中には大きなベッドがひとつ。そしてソファ、ハンモック、テーブルの上には果物がのっていた。

そこで私も思い当たる。

「グランピング!!」

「正解」

ホテルのスタッフから、ここには貸し切りの温泉があって好きな時間に入れる説明を受けた。ここに来るときに見えたあの小さな建物がそうらしい。

このホテルのグランピングできるテントは3つしかなく、そのどれもに温泉がついているのだという。

夕食はテントの前に張り出したテラスで食べられる。見晴らしもいいし、屋根もついていて雨でも平気らしい。テントの中は空調もついているって、なんて至れり尽くせりなんだろう。

「素敵」

ベッドに座り、部屋の中を眺め、外の景色に目を移す。隣に彼が座って、

「本格的なキャンプもいいなぁと思ったんだけど、夜勤明けの寧々に無理させたくないから」

と私の腰を抱いて頬にキスしてきた。

「温泉もあるなんて…信じられないよ」

「うん、一緒に入ろ」

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