全ては君の思うまま
「やっと電話繋がった」

槙の心配そうな声がした。なんだかとても久しぶりのような気がする。でもこの声すごく安心する。

「生島さんから聞いた。お父さん大丈夫?」

「まだ目を覚まさないけど、大丈夫みたい」

「寧々は?大丈夫?」

この人の優しさが、たまらなくなる。

「うん、大丈夫」

はりつめていた気持ちがほぐれて、涙だけがこぼれる。今、泣いたってどうにもならないのに。ちゃんとしてなきゃいけないのに。

「寧々、泣いてる?」

「泣いてない。ありがとう。じゃ、切るね」

電話を切り、弱くなってしまった心をどうにか切り替える。母の前で泣くわけにはいかない。とにかく、今は。

病室に戻ると、母がこちらを振り返る。

「寧々も仕事あるでしょう?お父さんは私が見てるから、いいのよ戻りなさい」

「少し休みをとったから。久しぶりに帰ったんだし、ゆっくりさせてもらうから」

相変わらず父は眠ったままだ。
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