全ては君の思うまま
その日のお昼に田神から電話があり、昨日のワイン会の様子を聞いた。それなりに出来て、それなりにダメ出しをくらったらしいけれど、方向性は大分固まってきたみたい。

再来週から昼のランチ営業も再開されることが決まったらしい。それまでには私も一度もどらなくてはいけない。

田神と打ち合わせをしながら、手帳にあった私の仕事の一部を彼に頼んだ。本当はパソコンを開いて、田神からの資料を見ながらいろいろ検討したいことがあったんだけれど。

いろんなことを考えてしまう。
私、会社を辞めてこっちに帰ってきた方がいいんじゃないか、とか。妹夫婦は旅館もあるし、母親一人で介護となると心配な部分は多々ある。

病院の休憩できるフロアでコーヒーを飲んでいると、テレビではいつものようにニュースが流れていた。

どこかの会社の統合の話。
上の空で画面を見つめていたのに、その顔に見覚えがあった。

鷹野氏と呼ばれたその人は、間違いなく槙の父親だった。

「今回、私が就任いたしましたことは…」

いくら経済に疎くてもこの会社名くらいは聞いたことがある。槙は製薬会社社長の息子?!

いろんなことが一気に起きすぎてくらくらする。だからあんなマンションに住めるわけだ。
そうだよね、気づかないふりをしていたのは、私だ。


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