全ては君の思うまま
「どうして連絡くれないの」

彼の声が刺々しい。何も言えないでいると

「どうしてお父さんが倒れたって俺に連絡くれないの?そんなに頼りない?」

きつくきつく抱き締められ、申し訳ない気持ちで一杯になる。

「何でも俺に言ってよ」

大きいスーツケースをひいてきたらしい。
これに私の着替えとかが入っていると教えてくれた。

「一度帰ろう」

槙が私の手を引く。

もうこんな風に会うことも出来なくなるかもしれないな、もし、私が実家に戻ったら。

そんなことを思いながら、これからのことをぼんやり考える。槙とこのまま暮らすのは難しいかもしれない。

ため息をついてしまって、彼に顔をのぞきこまれる。

「何でも一人で抱えないで」

額に軽くキスされた。
顔が熱くなる。この人はこういうの恥ずかしくもなくやるんだな。手強すぎる。
タクシー待ちの列に並び、東京の風も冷たいことに気がつく。雪はもう降ったんだっけ。

忙しすぎて、いろんなことが後回しになっている。


< 61 / 72 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop