全ては君の思うまま
結局は、断りきれなかった。

絶対に揺らがないと決めた私の決意を変えさせるほどの、槙の決断。

会社を辞めるのは、元から悩んでいたことだったと後から聞いた。相談しようと思っているところへ、私が別れ話をしてしまったのだと。

あの日は、いきなりプロポーズをされて、それでまたデートを申し込まれた。

辞めた理由も聞けないままではいられない私の性格をわかった上で、デートのお誘い。

改めて思う。
槙には敵わない。NOと言わせない、って自信がどこから沸いてくるのかわからないけど、でもそれは本当にNOとは言えなくなる。

私たちはワイナリーにデートに来ていた。
次の配属先になる、営業所からも近く、実家にも一時間ほどでつく距離。

「ようこそ。俺のワイナリーへ」

俺のってどういうこと?
疑問符もありながら、改装中のワイナリーの中へ入る。

「工場はこんなかんじ」

建物の中を案内された。聞きたいことはあるのに、槙はなかなか教えてくれない。
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