全ては君の思うまま
工場の前には広大な土地に葡萄畑が広がっている。

「ここ、買い取って少しリニューアルしたんだ」

成功するか失敗するか、俺にもわからないけど、やってみたくて。

槙は独り言みたいに私に語りかける。

「ワインが好きで、ワインに関わる人も大好きで、ここが経営難って知ったときいてもたってもいられなくなって。気がついたら辞めてた」

だから、俺がここに住んだとしても、これは俺の意思。寧々のためにこの土地を選んだんじゃないってこと。

「わかってくれる?」

槙は私を抱き寄せ、髪に触れた。

「こんな男でよければ、ずっと一緒にいてくれない?」

「嫌だっていったら?」

「言わないよ、だって寧々は俺のこと…」

こんな台詞を照れずに言える男に完敗だ。
結婚してここが見事に失敗して借金かぶる可能性だってあるのに。

「失敗なんかしないよ。俺はここのオーナーになるだけで、ワイン作る人は別。そのための人脈も資金も必要とするものはすべて手に入れるし、手に入らないものは必ずモノにする自信がある」

「随分な自信ね」

槙のペースにのせられてしまっている。この人はいつもこうなんだもの。

「君さえいてくれたら」
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