わたしが「呼吸する」とき
そんなことを思い出していると、突然電話が鳴った。
泣き腫らした目で携帯を覗くと、ディスプレイには彼の名前が映し出されていた。
「……もしもし」
「菜摘さん?仕事お疲れ様」
「……うん。幸樹くんも、仕事お疲れ様」
いつもなら元気あるはずの声音も、今日は陰気あるトーンになってしまった。
それに気づいた彼は、こんなことを言った。
「元気ないね。そうだ、俺今からそっちに行くわ。いや、向かってる」
「そっちって。え。えっ!?私の家に来るの?」
「お酒とおつまみも持ってくるね。じゃあね」
そう言うと、彼はブチっと電話を一方的に切った。
私は急いで散らかしてる部屋を綺麗にし、泣き腫らした目で会うのも嫌なので、洗面台で顔を見てバシャバシャと何度も洗った。