わたしが「呼吸する」とき
私の胸中なんか知りもしない彼は、優しく微笑んで口を開いた。
「何かあった?今日の菜摘さん元気ないよ」
「そ、そうかなぁ。至って私はいつも通りだよ。幸樹くんの気のせい気のせい」
これ以上心配かけまいと、私は気丈に振る舞うようにした。
だが、彼は見抜いていた。
「いつも通りじゃない。菜摘さんらしくない。お酒を遠ざけるなんておかしい。何かあったんでしょ。職場で嫌なことでもされた?困ってることでもあったら言ってもいいんだよ。相談乗りたいよ?俺はね」
そう言うと、私の頭を手のひらで優しくポンと触れ、クシャッと笑った。
ドキドキしてるのは、きっと私だけだ。
彼と出会ってから、彼には何でも相談していた。
どんな些細なことでも。
彼は嫌な顔せず話を聞いてくれるのだ。
けど、今回ばかりはそうはいかないと、私の心の中では既に反応していた。