わたしが「呼吸する」とき


それはこの職に就いて3年目のある日。

残業を終え、帰宅したのは21時だった。


当時持っていた年長クラスの中に、発達障害の女の子がいた。

1年目も2年目も彼女とはあまり関わりがなく、3年目になって初めてその子の担任になった。

始業式の前、前担任の先生からその子についての話を聞かされた。

その先生から1冊のノートを渡された。


「2年間この子の担任をしていた者として、菜摘先生には色々知ってほしいし、好きになってほしい。発達障害だからと言って、他の子と違うことなんてないってことを、わかってほしい」


そう言われたとき、当時はあまり理解できなかった。

何故あのとき、面と向かって私にそう言ったのか、私には不思議なことだった。


家に帰り、早速渡されたノートを開くと、そこには彼女について詳しく書かれていた。

こういう場面のとき、こういう対応をした、とか。

彼女の2年間がびっしり記されていた。


< 8 / 18 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop