@YUMI KO
それでも聞こえてくる、エマの声。


「なぶり殺してやる! なぶり殺してやる! なぶり殺してやる! なぶり殺してやる!」


エマは瞬きもせずにジッと人形を見つめている。


「な……なに……?」


思わず妹から逃げてしまいそうになったとき、異変を感じたお母さんがキッチンからやってきた。


「ちょっとエマ! なにしてるの!?」


怒鳴ると同時にエマから人形を取り上げる。


人形を取り上げられたエマは途端に大人しくなり、キョトンとした表情でお母さんを見上げた。


あたしは恐る恐る両耳から手を離した。


あんなエマを見たのは初めてだったから、心臓が早鐘のように打っている。


背中にはじっとりと汗が滲んでいて、気持ちが悪かった。


「ちょっとナナカ、変な言葉を教えないで!」


お母さんに怒鳴られて初めて我に返った気分だった。


「ち、違う。あたし、教えてないよ!」


慌てて左右に首をふり、否定した。


でも、お母さんの言う通りあんな言葉を教えた誰かがいるのだ。
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