極上旦那様ととろ甘契約結婚
覚えていますか?
「あれ、君のお母さんの煙?」

「……はい」

煙を見続けてこちらを見ないままに小さく、無感情な返事をする少女は、その瞳に涙の膜を張っていた。きっと少しでも顔を動かせば、我慢しているものが涙もろとも決壊してしまうのだろう。
自分と同じ境遇だからか、すんなりと理解出来た。

「俺も。同じなんだ」

「……そう」

「母親。亡くしたんだ」

「ーーーそう」

ポツリポツリと続く会話で初めて、少女の返事に感情が入った。気がした。

それが予想外に嬉しくて、どうにかして少しでも笑って欲しくて。俺はぐるぐると考え出す。きっと彼女が笑ってくれたら俺の気持ちも浮上するんだと、勝手な思い込みをしたせいだ。
そしてやっと思い付いたのは、つい最近読んだばかりの本の内容だった。

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