極上旦那様ととろ甘契約結婚
「近くからだと甘えちゃうから。それにあなたに助けてもらう前に、神様を当てにしなきゃ。でなきゃ信じた結果が分からないもの」

「それもそう、かな」

「そうよ。それに誰もいなくなっても、離れた場所から見守ってくれてる人がいるって思えば頑張れるから」

「っ……それはっ!」

そんなギリギリの覚悟をさせたい訳じゃないのに。ただ幸せになって欲しいと思っただけなのに。

でもそんな想いは俺の唇から発せられる事はなかった。

ゆっくりと瞼を閉じた少女はこちらを向き、初めて俺をその瞳の中に写して言ったのだ。

「ありがとう」

乾かなかった涙が右の頬を濡らしている事にも気付かないまま、精一杯の笑顔を作って。

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