極上旦那様ととろ甘契約結婚

正社員が難しい状況だったからこそ、限られた選択肢の中で収入が高い派遣社員を選んだというのに。思った以上に不安定な立場だったと後悔のため息を吐きながら、とぼとぼと一駅分歩き切った。

そのせいで思ったより時間がかかったらしい。指定の店に辿り着いた時には、高崎主任は既に席に着いて待っていた。

「すいません、お待たせしました」

本当に悪いと思っているわけでなくとも、社会人として身に染み付いた何かが謝罪の挨拶をさせる。

「いや、大丈夫だ。それより何かあったか？」

「何か、とは？」

「いや、俺より早く会社を出たはずなのに到着が遅かったから気になったんだ。課長か部長にでも捕まったかと」

「あぁ、謝罪を受けたか？って事ですね。残念ながら謝罪は受けてないです。高崎主任が遅くなると思って一駅分歩いただけで」

「歩いた？」

「はい。今日は一人で店で待ってても楽しい時間にはならないと思ったものですから」

「そうか……そうだな。すまない」

「いえ、謝って頂かなくて結構です。それより本題に……」