極上旦那様ととろ甘契約結婚
目の前の修吾さんがさっきまでと違う、真っ赤な顔で横を向いている。顔の下半分は大きな掌で隠しているが、動揺もひどい。

「悪い。それ……成美が妻だって知って連絡してきたかもだ」

じゃあ、あれは私に探りを入れる為にわざわざ電話だったのだというのか。

「え?だって修吾さん、結婚相手が私だと」

「言ってない。成美の希望通り言ってないよ。でもその……海に行った後ちょっと浮かれてて……」

「何か、言ったんですね?」

「それはその……結婚を知った部下に『もっと笑わないと奥さんに怖がられますよ』って揶揄われたから『妻には職場でも家でも怖がられた事はない』って……惚気た」

「ーーー惚気たんですか」

「職場でも」って言葉は裏を返せば「職場での姿を知っている」って事で、同じ職場だった事を意味している。
しかも事業部はここ数年、女子の人事異動が少なくて、私が在籍した三年弱の間で移動していった女子社員は私以外は既婚女性が二人だけ。つまり、と容易く答えが連想できるのだ。
言ってなくても言ったに等しいって自覚はあるんだろう。

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