極上旦那様ととろ甘契約結婚
でも今は分かる。細マッチョな体型やら端正な顔立ちやら女子受けしそうなポイントも多いし、なにより全体的に男の色気が漂っているのだ。

高崎主任は特段お洒落なわけでもない。スーツもオーソドックスな色と形だしネクタイだって印象に残っているものはない。だからこうやってまじまじと観察するまで全く気がつかなかったけれど。

だが、それにしても気が付かな過ぎだろう、と心の中で自分自身にツッコミを入れる。
恋愛を捨ててから女性としての察知能力まで低下してしまったとしか思えない。

だって社内でたまに顔を合わせるだけであろう女子たちは気付いていて、毎日同じオフィスで仕事としていた自分は気付けなかったのだから。

「……何か顔についているか?」

自分の女子力が低下していたという衝撃的事実が判明して、うっかり前をみつめたまま固まってしまったらしい。不審げに声をかけられて、慌てて意識を切り替える。

「あ、や、あの……何もついてないです」

とは言え咄嗟にゴマかす能力は備わっていない。視線を下げながらごにょごにょと申し開きをすると、軽いため息で返された。

「昼間の件で聞きたい事もあるんだろうが、まずは食事にしよう。話はそれから。多少込み入っているしな」

「あ!そうですよね、派遣会社とか絡んで……」

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