極上旦那様ととろ甘契約結婚
「不幸、は大袈裟かもですが。そうですね、それ分かります」

ゆっくりと存分に食事を楽しみながら、多少ぎこちなくも会話も続いていく。

やがて全部食べ終わって、食後にコーヒーとデザートが運ばれて来た。今日のデザートはカシスとヨーグルトのムースだそうだ。白と紫のコントラストが美しい。

「主任、甘いもの食べるんですね」

「ん?」

「バレンタインに甘いものが苦手だって言ってらしたので」

「ああ。あれは嘘だからな」

「嘘、ですか?」

「義理チョコを否定するほど子供じゃないつもりだが、一つを受け取ると他を断れなくなる。だから最初から絶対に受け取らないと言っておいたほうが平和なんだ」

「なるほど……」

「それに少々苦い記憶もあるんだ。学生時代に手作りのチョコをもらった事があったんだ。流石に怖くて食べなかったんだが、後日詰られてな。〝媚薬を入れたのにどうして好きになってくれないんだ〟って。恐ろしいだろ?」

「それは確かに……」

もはやホラーの域だ。聞いているだけで身体がぶるりっと震えた。

「でも本当は酒も甘いものも好きだ。たまにだが、自分でケーキを買うこともある」

「そうなんですか!……っていいんですか?」

「何が?」

「私にそんな秘密話してって……あ、そっか」

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