極上旦那様ととろ甘契約結婚
言われて初めて気付いた。

〝結婚〟のワードが出た時から自然と恋愛感情からの申し込みだと自惚れていたらしい。プライベートで出かけた事は勿論、話した事も大してないのに。私はさっきまでとは違う意味で赤面しながら、それを隠して話を聞く。

「そう、お互いに得が出来る。別の言い方をすれば、俺たちが結婚すれば二人共に直面している難題を回避出来る」

「私と高崎主任が直面してる難題ですか?」

正直、自分の事はともかく、高崎主任が直面している難問なんてちっとも知らない。

「まず君の場合は経済的な安定だ。採用された時に個人情報を見たが、確か家族も近い親族もいなかったはずだ」

「はい。そう、ですね」

「その状態で仕事を失っては経済的に困るだろう?話も突然だったから次の仕事を探すのも難しいだろうしな」

それは否定出来ない。だからこそ、昼間に話を聞いた後にあれだけブルーになったのだ。
職を失ってもアパートの家賃も食費も掛かるし、私の面倒を見てくれる家族が現れるわけじゃない。蓄えだって多少はあるが、今後を考えればなるべく切り崩したくはない。

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