極上旦那様ととろ甘契約結婚
とはいえ、自分の生活の保証の為に高崎主任の人生を犠牲にして良い事にはならない。
しかし、と提案を断ろうと顔を上げた私が口を開く前に主任が話し出した。

「勿論、俺にとってもメリットのある提案なんだ。だからこそ提案をしているのだし、そこは誤解しないでくれ」

「では、高崎主任のメリットって何ですか?」

直球な質問だが、それを知らなくては前にも進めない。

「理由はいくつかあるんだが、一番は周りが煩い事だな。会社の上の人間は三十過ぎた管理職は結婚してるほうが社会的信用がって言うし、便乗して持って来られる縁談やら寄って来る女性も鬱陶しい。親父もまぁ、これはちょっと仕方ないところもあるんだが、俺に早く家庭を持って欲しいってずっとせっついてるしな。君と結婚すればこの二つのプレッシャーから解放される。それに来春の昇進と同時に移動が決定しているから、俺はこれから随分忙しくなる。君にその間、家事全般を任せてしまえば生活環境も整うし、家事に時間を取られる事もない。勿論、給料は払う。他に質問は?」

業務連絡のように淡々と、しかも理路整然と説明された私は引き立った笑みを浮かべるのが精一杯。あまりに感情を排した話に質問なんか浮かばないし、正直ちょっと気分が沈む。

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