極上旦那様ととろ甘契約結婚
思い出せてますか?
どうにか軌道修正に成功した夕食はそのままつつがなく終わり、修吾さんがお風呂に行っている間に私は後片付けを始めた。

「久しぶりに口にしたかも……」

単純作業はついつい思考を広げてしまう。私は食器を洗いながら、さっき自らが口にした言葉を思い出していた。

『食べる事は生きる事』

それは私が18歳の時に死んでしまった母の口癖だった。

美味しいものが大好きで、嬉しい事があった時も自分や娘へのご褒美にも洋服やバッグじゃなくて、ちょっと素敵な心躍る食べ物を買ってくれた母だった。

「だってほら、食べちゃうから収納場所にも困らないし、栄養になってくれるのよ。だから次の日には健康になれちゃう!しかも食べてる時には幸せになれちゃうなんて素敵でしょ?」

そう言いながらじっくり味のしみた煮物やカラリと上がった天ぷらを食卓に並べてくれた。

シングルマザーで仕事も忙しいかったろうに、食事には手を掛けてくれていた。自分が働くようになって初めてその凄さに気付いたし、自分に出来るかと問われても全く自信がない。
大好きな、自慢の母だった。
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