極上旦那様ととろ甘契約結婚
お風呂に入りながら「うーん」と考えてもちっとも浮かんで来ない。ただ考えに考えていたら、別の事を思い出した。

「あ、お葬式の時だぁ」

母の口癖と共に私の人生を支えてくれた言葉。それをいつ聞いたのか、さっきお皿を洗っている時は思い出せなかったのに不意に思い出したのだ。

「流石、私ってば『神様に信用されてる』だけあるわ」

久しぶりに思い出せた懐かしい思い出に胸の奥がほんわりと暖かくなる。

『神様に信用されてる』から私は大丈夫なのだと踏ん張って生きてきた過去の自分は、頑張って頑張って頑張り過ぎて。精神的に苦しかった時期にいくつかの思い出を手放してしまったのだ。

いつ誰から聞いたのかも忘れてしまったのに、それでも言葉だけは記憶に残って自分を支えてくれていた。

「そっか、お葬式だったのか」

思い出してみれば、すんなりと納得出来た。




母を亡くしたあの日、保険金やら私の引き取り先やらをこそこそと話す親戚と一緒に居たくなくて。18歳の私は火葬場の待合室を飛び出して、建物の裏に回って、煙になって空に登って行く母を一人で見送っていた。
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