極上旦那様ととろ甘契約結婚
「…………………は?」

短い言葉だったのに理解するまでにやけに時間がかかってしまった。いや、理解したはずの今も正直、聞き間違いだと思っている。

「詳しい条件については後で説明する。終業後にここに来てくれ」

そう言ってメモを手渡すと、こちらの反応も見ずに自席に戻っていく。

「え?あの!」

数秒遅れて声を上げようとして、断念した。

「……お疲れ様です」

数人の社員が昼休憩から戻ってきたのだ。

そのままメモをくしゃりと手の中に握り込み、何事もなかったようにそのまま席に座ると、机の下でそっと掌を開いた。

『コンダティーノ』

店の名前と簡単な地図が几帳面な角ばった字で書かれている。名前からしてバーかイタリアンか、どちらにせよお洒落な店だろう。場所は会社の最寄駅から一駅離れている。

< 9 / 133 >

この作品をシェア

pagetop