極上旦那様ととろ甘契約結婚
「ーーーダメだって言ったろ。ほら、血が出てしまう」

どうしようもない程優しい瞳が私を見つけて、ふわりと微笑む。そしてゆっくりと持ち上がった掌が私の頬を包み、親指が唇に触れた。

知らずにぐっと噛み締めていた唇は修吾さんの親指を介して、微かな鉄の味を知らせる。修吾さんもそれを親指から感じ取ったのだろうか、少し眉根を寄せた。

「成美傷つけるのは成美でも許さないよ」

「なんですか、それ……」

無茶苦茶な論理に笑ったはずなのに、私の目からは涙が溢れて。それをぼんやりと見ていた修吾さんがハッと息をのんで、ガバッと起き上がった。

「えっ……なんで!?成美、もしかして本物?」

「そうですよ。本物に決まってます」

「いや、だって、ここ……。え?本当になんで?成美、どうしてここにいる?」

軽くパニックになっているらしい。周囲を忙しく見渡しながら誰にともなく話しているのは、クールな修吾さんにはなかやかレアな姿だ。

「点滴してるのにそんな動きまわったらダメですよ」

「あ、あぁ……」
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