僕の家族はなによりも…。
かなりの時間、由紀を探したけど……、どこにも見つからなかった。
不安が押し寄せて、必死に走りながら由紀を探す。
「由紀ー!」
ふと、目についた大きな木。
急いでそれに駆け寄ると、くぼみに足を引っ掻ける。
木に登って、周りを見回した。
どこ…、どこにいる。
由紀は僕より背が低いし、体重もそんなにないはず。
地面の枝や葉っぱを踏んでいたら少しでも音がするはず…。
ピキッ
「っ……由紀!?」
真下で音がして、地面を見下ろす。
だけど、そこにいたのは由紀ではなかった。
由紀よりも背が低い女の子は、ピンク色のリュックを背負い、泣き腫らした顔で僕を見上げていた。
この森は、私有地で向こう側から人が入ってくることはほぼない。
この女の子は知らずに入ってきたんだろうけど…、泣いてるし、迷ったのかな?
僕は木の枝から手を離すと、足で軽く木を蹴って、下に降りた。
女の子の前まで来ると、その子はゆっくりと顔をあげる。
「大丈夫?もしかして、迷ったの?」
怖がらせないように、小さく微笑みながらそう言った。
すると、女の子はぽろっと涙を流して。
「うさぎのぬいぐるみが…っ……草むらに落ちちゃって…っ」
うさぎの…ぬいぐるみ?
由紀を探している間に、そんなもの見たかなぁ…?
うーん…、この子が一体誰なのかもわからないし…。
この子がいう、うさぎのぬいぐるみも探してあげたいけど……。
由紀が今、もし危険な状況にいたらそっちを最優先しなくちゃいけない。
由紀は双子の姉で、大切な家族だ。
こんなところで立ち止まってちゃいけないけど…。
目の前で泣いてる女の子は、放っておけない。
「じゃあ、一緒に探してあげる。どこで落としたの?」
うさぎのぬいぐるみを探している最中にも、由紀を見つけることが出来るかもしれない。
僕はそう言って、女の子の手を握った。
手を繋いでいれば、きっと怖い思いもしなくなると思う。
すると、女の子はふにゃっと微笑んだ。
どきっ
ん…?『どきっ』……?
一瞬だったし、その気持ちの正体はわからなかったけど、今ならわかる。
その子は、僕の初恋の相手だった。