僕の家族はなによりも…。
そのあと、うさぎのぬいぐるみを探して、見つけ出すことができた。
多少汚れていて、右腕もちぎれているし…虫もたくさんついている。
女の子が怯えているのがわかって、ぬいぐるみを傷つけないように優しく全部取ってあげた。
右腕を直すために、女の子と一緒に僕の家まで歩いていった。
誰かを招くのは初めてで、少し落ち着かなかったけど。
近くのお裁縫箱から針と糸を取り出して、数分で直すことが出来た。
母さんから教わっていたお裁縫がこんなところで役立つなんて…。
直った腕を見て、女の子は嬉しそうに笑った。
ふふっ…表情がころころ変わるなあ、この子。
素直で、可愛い。
さっきまであんなに泣いていたのに、今はすっかり笑顔だ。
この子の大事なものを見つけ出すことが出来て良かった…。
名前を聞くと、この子は『長田 真莉』っていう子らしい。
自己紹介の仕方は良かったんだけど、自信満々に言うのが面白くて、つい笑ってしまった。
きちんと名前を言えるなんてすごいね、と頭を撫でてあげると、真莉ちゃんは嬉しそうに笑った。
だけど、悲劇はすぐそのあとに起こった。
僕と真莉ちゃんの話し声で気になったのか、母さんが二階から降りてきた。
母さんは真莉ちゃんを見て、目を見開く。
そして、棚に置いてあったサンタクロースの置物を手に取った。
「……母さ、ん?」
ゆっくりと歩みを進めて、僕達に近づく。
真莉ちゃんを見ると、うさぎのぬいぐるみを嬉しそうに抱き締めていた。
サンタクロースの置物を振り上げて、目をカッと開いた。
ゴスッ!!
っ!
サンタクロースの置物は真莉ちゃんの頭部に直撃した。
苦しそうな表情をして、気を失った真莉ちゃんはゆっくりと足から倒れていく。
うさぎのぬいぐるみが、僕の足元に落ちてきた。