僕の家族はなによりも…。
ガサッ……ガサッ……。
床が変な音を鳴らし、僕を慌てさせる。
きっと、母さんは僕がここにいることがわかっていた。
声が大きくなっていたと言うことは、こちらに近づいてきている証拠。
母さんは拳銃だって持っているし、そしたら殺されてしまう。
青いタイルの床に足をついた途端、急な眩暈に襲われてしまった。
「…う……っ」
目の前がふらふらして、真っ直ぐ立てない。
慌ててしゃがみこみ、目を閉じて深呼吸する。
その時、鼻につんとした痛みを感じた。
多分、眩暈と鼻の痛みはこの甘い匂いが原因だ。
頭がふらふらして、ひどく甘い香りが脳内を駆け巡る。
元々、僕は甘い香りというのが大の苦手だ。
お菓子の匂いは好きだけど…その他はほとんどだめ。
がたっ…と倒れそうになったその時。
「っーー!た………て…!……り……!」
「この声……まさ…か」
足に力を入れると、ゆっくりと立ち上がった。
歩みを進めるたびに、車酔いのような感覚が強くなっていく。
その匂いの原因となるものは、向こうの部屋にあるとわかった。
今まで入ったことがない、緑色のドアの向こう。
木が剥がれ、ほとんど緑色の感じは無いけど。
近くにあった明かりに、マッチの火をつける。
空になったマッチ箱を捨てると、ライトを持ってドアに近づく。
ドアノブを回して、ゆっくりと開けた。