never (上)
不思議だね……なんか、榊さんが『大丈夫』って言うと
ほんとにそんな気がしてくる。
「っ……手っ」
それでも不安な時榊さんを求めてしまう……あの暖かい手を。
伸ばす手をしっかり掴む榊さん。
「大丈夫だ…柚莉」
その言葉を繰り返し続ける榊さんは自分では
気づいてないかもしれないけど……すごく手が震えてる。
嬉しい……。
ふと、何故かそう思った。
何が嬉しいのか自分でもよく分からない。
でも、心が温かくなる。
「準備が出来ました。どうぞ」
「柚莉……動くぞ」
私を優しく抱き上げゆっくりと車に乗せる。
横抱きで少しでも振動を避けようとしてくれて…助かった。
「おい曽田爺!」
バンっと大きな音を立てて部屋に入っていく榊さん。
「なんじゃなんじゃ…突然……おやまぁ。こんなに傷を……どうしたんだい?」
「事情は後で説明する」
「ああそうした方がいいわい。とりあえずはよ出ていき」
「おいジジィ…柚莉に変なことしたらタダじゃおかないからな」
「わかっとるわいっ!いいから早うっ!」
バンっとまた大きな音を立てて部屋を出ていった。
「お前さん…車から飛び出したか?」
まだ何も言ってないなのにっ!?
「……っ…っえ?……なんっ……で」
「あぁいい後で聞く。早う手当てせんとな」