never (上)
「…っ!?………はぁ…ほんと、ジジィには適わねぇよ」
なんでも知ってやがる。この生意気爺さんは。
どこからその情報を持ち出しているのか。
「ひとつ言っておくぞ、夏目」
急に緊張感を出すから、つい柚莉の手を握ろうとする。
「そうやってその子に深入りしてしまうと…後が面倒じゃぞ?」
ピクっと伸ばしかけていた手が止まる。
ふっ…やっぱり……ジジィはなんでも知ってやがるな。
「……あぁ、わかってる」
「ならいいのじゃが……後々傷つくのはこの子じゃ。そうゆう所をもっと考えろ。よいですな?…若」
「急に上下関係を出すな…気持ちわりぃ」
「最近ちぃとばかしお口が生意気になってきたのぉ」
「あんたもな」
ジジィの言う通り依存するつもりはねぇよ……。
けど……柚莉の体温を感じた時……何かに捕まった感覚がした。
完全に冷えきった手なのにどこがまだ…温かさを残している手を
どうにも離したくない……。
俺がその冷たい手を俺の体温で温めたいって思うのは、どの感情がそう思わせているのか……。
知りたくない…が。
知っても後悔しないような……どこかそれでもいいような……。
「……柚莉」
お前に……堕ちそうで……怖ぇよ。