never (上)


ーーーーーートントンッ


「柚莉…起きろ」


耳元から低く優しい声が私を呼び戻す。


「んっ……榊…さん」


目の前には微笑む榊さんの顔……。


あぁ…安心する。

ここに榊さんがいると知っただけでとても心が温かい。



「……夕食だ…来い」


「夕食…?」


え…?

もうそんな時間?


「私…何時まで」


「5時間くらいだな…」


そんなにも……。


それより私も一緒に食べてもいいのかな?


さっきまであんなことがあったから…少し行きにくい。

榊さんはそんな私を見て気づいたように…優しい目を向ける。


「大丈夫だ、柚莉」


その言葉が耳に届いたとき…ゆっくりと顔を上げる。

そして…ゆっくりと微笑む。あなたと一緒に…。


そう…貴方の『大丈夫』は自信をくれる。

背中を押される…。

貴方の言葉に…どれだけの力があるのか。

まるで…ほんとに魔法にかかっているかのように……。


「…来い」


私の前に差し出された綺麗な手。

その手のひらに私の手を添える。


途端に…嬉しそうに微笑む榊さん。


「なんか……いいな」


「……え?」

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