never (上)
「いや、なんでもない」
濁されたせいで私の好奇心はさらに高まっていく。
「え?なんて言ったんですか?榊さ〜ん」
グイグイと榊さんに近寄って顔をじっくりと見る。
「…はぁ」
それに迷惑そうに顔を顰めた榊さんはため息を一つ落とす。
それでも…直ぐに爽やかな顔に変わるのは…素直に嬉しい。
「早く…行くぞ」
「…ふふっ……はい」
手を絡めて二人、一緒に歩き出す。
久しぶりだな……誰かと2人でこうして歩くのは……。
……もし、これからも榊さんの隣を歩けるなら……。
なんて…欲張りな考えをしてるんだろう。
「……柚莉?」
「なんですか?榊さん」
「……榊さん」
「…え?」
「名前で呼べ」
名前で呼べって……突然だな。
榊さんのことを夏目さんって言わないといけないの?
「えっ…と。それって絶対ですか?」
「あぁ」
うぅ……かなり恥ずかしい。
会った時から榊さんって呼んでたから……難しい。
「なっ…なつ…なつ…めさんっ」
「夏目だ」
「呼び捨てっ!?」