君を離さない。

美しい。

俺は口を閉じることも忘れ瞬きもせずにただ黙ってすぐ前を見ていた。

俺の後から登校してくる生徒なんて全員空気みたいに他のことなど何も考えられないほど。


美しいという言葉はきっと彼女に向けられて作られた言葉。

そんな風に思ってしまうほど俺は強く彼女の虜になっていた。

人がよく死ぬときに動きがスローモーションになるような安っぽい映画館で流れているエンディングみたいで少し笑ってしまう。


そんな俺を見向きもせず彼女は下駄箱ではなく
職員室のある方へ足を進めていく。


「え」

唯一言葉を発することが出来たのは
彼女の姿が見えなくなってからだ。

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