ずるいひと
私は一日だけ部屋を交換してもらった日、優也の部屋の窓をノックした。

コンコンコンコン…

返事はない。
私が彼の部屋の窓をそっと開けると、ベッドに寄りかかってうたた寝をしている優也がいた。
亜貴は、こんな優也の姿を見ることもできるのか。

いつも三人一緒だなんて、嘘つき。

そう思ったら、悔しくて悲しくてどうしようもなくて、私は優也にそっとキスをした。

「亜貴……?」

優也がうっすら目を開けながら、つぶやいたのを見て焦った私はすぐに部屋に戻った。
でも、すぐに気付かれてもいいと思い直した。
亜貴に聞いたら正直に「私じゃない」と言うと思った。

でも、亜貴は言わなかった。

聞いた訳じゃない。
でも、姉にも優也にも何も言われなくて、その後二人が付き合いだした。
その頃、亜貴は私と目を合わせようとしなかったから、「あぁ、言わなかったんだな」と察した。

ずっと三人一緒なんて詭弁でしかなかった。
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