ずるいひと
「ずっと三人一緒だなんて嘘だったね」

多分、え?って優也は聞き返そうとしたんだろうけど、私が彼の唇を塞いだからそれは予想でしかない。

酔っていた彼は体勢を崩して二人して固い床に寝転ぶ。
一瞬強い抵抗を感じ、私は首に腕を回して逃さず、噛みつくように彼の唇に深くキスをする。


舌を噛みきられてもいい。
死ぬほど軽蔑されてもいい。
どうせ、私のものにはならないのなら。


躊躇している気配がしばらく続いたが、不意に抵抗の力が弱まる。

「……真貴…?」

あれは真貴だったの?と言った気がしたけど、名前を呼ぶ声だけが脳みそを溶かして聞こえなくなる。

私が何も答えずにいると、彼は私の唇を舌でなぞるようにキスをする。


誰も彼もずるい。


こんなに狂おしいほど欲しくて仕方ないものを持っている人は、今日も〈友達〉のところにいる。


心にぽっかり穴が開いて不安な人は、その穴を埋めるためだけに私を求めている。


そして、私はそこにつけこんで私欲を満たそうとしている。

じゃあ、私は姉をどうして責めることができよう。
< 5 / 7 >

この作品をシェア

pagetop