Secret Music
放課後の旋律
僕の名前は音崎響也(おとさききょうや)。見た目や成績だけを見れば、どこにでもいる普通の中学二年生だと思う。

そんな僕には、誰にも言っていない秘密があるんだ。

授業が終わり、僕は急ぎ足で音楽室へと向かう。うちの学校には使われていない第二音楽室という部屋があるんだ。

第二音楽室のドアを開けると、机も椅子もない部屋にポツンとピアノだけが置かれている。ピアノを動かすのは面倒でそのままらしい。僕にとってはありがたいんだけど。

「今日弾く曲は……これかな」

僕はかばんの中に隠している楽譜を取り出す。楽譜はいくつも持っていて、気分に合わせて弾く曲を変えているんだ。

今日弾くのは、シャルル・ヴァランタン・アルカンの鉄道という曲。この曲は蒸気機関車が走っている様子を曲にしたもので、難しい曲のランキングに上がるほどだ。

左手はひたすら八分音符の連打でリズムを取る感じ。でも、右手は十六分音符の連続でしかもテンポが早い。
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