夫婦はじめ~契約結婚ですが、冷徹社長に溺愛されました~
(本当に平気かな……)
生まれたときから御曹司の春臣さんは、家事というものを自分でするものだと思っていない。
だからといって私がやって当然だという態度を取らない辺り、真の意味で育ちがいいのだと密かに関心している。
そんな春臣さんがなぜ、突然料理に目覚めたのか理由はわからなかった。
でも、想像はつく。
なぜなら今日、春臣さんはなにやら難しい顔で進さんと額を突き合わせていたからだ。
(たまには料理でもてなしたりするんだぞー……とか言われたのかな)
春臣さんは幼馴染の進さんの言葉を聞きすぎる傾向がある。もともとちょっと一般の感覚とズレたところもあるせいか、そんなことまで本気にしてしまうのかということも少なくはなかった。
私が思うに、進さんはそれを面白がっている節がある。半分本気で、半分冗談で、余計なことを吹き込んでいるのは間違いないだろう。
「風呂に行かなくていいのか?」
声をかけられてはっとする。