夫婦はじめ~契約結婚ですが、冷徹社長に溺愛されました~
(こんな時間に……)
ろくな訪問者ではないだろうと思いつつ、一応インターホンをチェックしてみる。
テレビ電話になっているそこには、玄関前の光景が映し出されていた。
(……あ)
進さんがカメラに向かってにこやかに手を振っている。
その身体に寄りかかってうつむいているのは、間違えようもない私の夫だろう。
慌てて玄関まで向かい、ドアを開ける。
外の風がふわっと中へ入ってきた。
「いや、悪いね。こんな遅くに」
「いえ……」
「ごめん、ちょっと飲ませすぎた」
進さんは春臣さんの腕を自分の首に回しながら支えていた。こうでもしなければここまで来られないほど、お酒を飲んだということだろう。
「中、入ってください」
「うん、すぐ出て行くから」
ちら、と進さんが私を見て笑った気がした。
不思議に思いつつ中へ迎え入れると、進さんは春臣さんはソファへと横たわらせる。
長身の春臣さんを運んでくるのは大変だったのだろう。さすがに疲れたのか、肩を回しながら息を吐いている。
そんな進さんに急いでお茶を出す。冷蔵庫に常備してある麦茶だった。