夫婦はじめ~契約結婚ですが、冷徹社長に溺愛されました~
「すみません、春臣さんがご迷惑をおかけしたようで」
「いつものことだし、割と俺のせいだから気にしないで」
進さんはお茶を受け取ると、すぐ口に運んだ。喉が渇いていたのかもしれない。
春臣さんはと目を向けてみる。眠ってはいないようだけど、起きて積極的に会話に参加してくる気配はない。
よほど飲んだのかと心配しつつ、そっと肩に触れて声をかけてみた。
「春臣さんもお茶、飲みますか」
「……いい」
緩慢に答えたかと思うと、手を掴まれる。
「さっさと海理を追い出してくれ」
「なにを言っているんですか。ここまで運んでくれたのに」
それはないだろうと抗議の意味を込めて訴える。
なぜか、進さんが肩を震わせて笑っていた。
「邪魔なんだ」
「幼馴染でも言っていいことと悪いことがありますよ」
「お前が気にしないなら構わないが」
く、と腕を引っ張られてソファに倒れこむ。
まったく予想していなかった動きのせいで、まともに反応することができなかった。
倒れこむ直前、後頭部に添えられた手が私の頭を春臣さんの方へと引き寄せる。
そして、いきなり唇が重なった。