夫婦はじめ~契約結婚ですが、冷徹社長に溺愛されました~
(意外と頑固なんだもんなぁ……)
そう思ったとき、またくしゃみしそうになって慌てて口を手で覆う。
ぎりぎり間に合わず、中途半端に押さえたせいで奇妙な声が漏れた。
「っ、へぷしゅ」
「……今のはくしゃみか?」
「その顔、絶対わかって言ってますよね」
明らかに顔が笑っている。
私だってこんなおかしな音を出す人がいたら、うっかり笑っていただろう。だけど残念ながら今、妙な音を出したのは私自身である。
「くしゃみもかわいいんだな」
「……からかわないでください」
「本気で言ってる」
口元を覆っていた手を掴まれた。
引っ張られて春臣さんの背中に回される。抱き締めろ、と言いたいらしい。
抵抗しても無駄だろうと考えて渋々その通りに従った。
すんすん、と鼻を鳴らすと顔を覗き込まれる。
「熱は?」
「大丈夫です……」
「くしゃみ以外に不調は? 頭痛とか、喉が痛いとか」
「特には……」
「俺になにをしてほしい?」